プラス大イオン濃度変化による

地震予知の基礎原理

 

弘原海 清・原口 竜一・岡本 和人・和佐 好智・井田 佳伸

 

 唯一の希ガスである放射性ラドンが地震前に異常増大することはアメリカ,中国,日本の大地震前兆として数多く知られている.ラドン娘核種は単体のフリー金属原子で長時間存在できず,空中浮遊塵のエアロゾルと電気的に結合する.特に親核種と娘核種は物性が全く異なり,娘核種の半減期が分・秒と極めて短くて標準線源の作成が難しくて計測が困難である.一方,娘核種の210Pbだけは半減期が22.3年と長く,長期間β線(−電子)を放出し続けてプラスの自発電荷を持ち,エアロゾルと電気的に結合しても電荷の減少はなく,雪だるま式に肥大する.そのため粒度のみで他の帯電エアロゾルと明瞭に区別できる.

 現代の電子工業・バイオ工業ではクリーンルームは必需品で,そのクリーン度を計測するため大気イオン濃度測定器は広く普及してきた.一般の測定器はプラス・マイナスごとの帯電エアロゾルの粒子数(大・中・小)を立方センチ単位(濃度)で計測する.運転性能は安定しており,24時間365日の運転が3年以上可能である.基本的には,環境大気中のプラス大イオン濃度変化を計測することで,地震前兆としてのラドン量を広域的,積分的,平均的に計測していることになる.経験的には測定点から半径300km範囲の地震を事前に感知できる.