* 岡山理科大学大学院理学研究科総合理学専攻 Applied Science, Graduate School of Science, Okayama University of Science, 1-1 Ridai-cho Okayama 700-0005, Japan. E-mail: haraguti@das.ous.ac.jp
** 岡山理科大学総合情報学部 Faculty of Informatics, Okayama University of Science, 1-1 Ridai-cho, Okayama 700-0005, Japan. E-mail: wadatumi@big.ous.ac.jp
キーワード:データベース,宏観異常,インターネット
Key words:Database,The Macroscopic Anomaly,Internet
1.はじめに
中国などでは早くから宏観異常を使った地震予知への取り組みが盛んに行われている.現在本研究室でも同様の取り組みを行っている.ところで宏観異常という言葉を聞き慣れない方が多いのではないか.宏観異常とは言い換えれば地震前兆現象のことであり,動物や大気,その他大地の異常など,地震の前に起こる様々な異常現象のことを意味している.具体的にはナマズが地震の前に大暴れしたり,井戸水が噴き上がったなどと言う話しがそうである.
今回,全3回の台湾の調査では,この宏観異常現象による報告が多数集められた.そういった報告を地震の予知に生かすためには,多くの報告が必要であり,即座に収集出来ることが必要となってくる.先の発表では,単に現在目の前にある情報をデータベース化したものである.これは時間的制約がなく,しかも宏観異常報告を即座に集めてデータベース化し,住民に報告するとなると不可能に近くなる.これを経験として地震予知に生かすことは出来るかも知れないが,リアルタイムに地震危険予知に生かすこととなれば無意味なものとなってしまう.そこで最近の情報収集にはこのインターネットが必須アイテムとなってきており,この宏観異常の収集にもインターネットによるWebデータベースの活用が最適の手段であると考えられる.
インターネットの普及に伴いそれにしたがって,データベースの発達も進んできた.従来のデータベースは,そのまま情報をWeb上に提供する静的なものが多かった.静的なWebページを作る際,わざわざ手持ちのデータをエディタを使って編集し,HTML形式にしていた.最近のアプリケーションでは,HTML形式でデータを出力できる機能を備えているものも多く,容易なものとなってきている.しかし,情報の往来が活発化している今の状況では,静的なWebページのままではクライアント側への情報提供がリアルタイムで行えない.こうしたながれのなか動的なWebページの作成が要求される.その動的なWebページを作るアプリケーションの代表としてCGI(Common Gateway Interface)等があげられるが,これは呼び出し速度が遅く,またサーバー側のリソースを大量に消費するという欠点があった.そこで,より速く,より少ないリソースでアプリケーションを呼び出すことが出来るようにWebサーバー固有のAPI(Application Programming Interface)が用意されるようになった.今回本システムで使用したWindows NT server にはISAPIと呼ばれる独自のAPIが備わっている.このほかにWeb上からデータベースへのアクセス機能としてIDC(Internet Database Connector)があり,データベースに手軽にアクセスできる.これから実際にこれらを使ったシステムの機能の紹介を行う.
2. 宏観異常受信システム
宏観異常受信システムは,大きく3つにわけて開発をおこなう.第1に宏観異常目撃者の登録フォーム,第2に宏観異常情報の登録フォーム,第3に登録情報の閲覧フォーム,に分けられる.これらの3つを直接Web上から行うことができるシステムの構築を目指す.
今回のシステムの開発はWindows NT serverを使用しておこなった.それに付属しているIIS(Internet Information Server)はインターネットサーバーであり,WWWサービス,FTPサービスを提供することができる.この中でも特徴的なのがWWWサービス上のIDCという機能であり.この機能を用いれば,プログラマーでなくても自由にデータベースに対してアクセスできる環境を構築することが出来る.その中での使用ソフトや,NTサーバーのどの機能を使ったのかを以下に記す.システムの概要は第1図.
(1) OS
Microsoft社のWindows NT server Version4.0を使用,このシステムはWindows2000 serverにおいても使用可能.動作確認済み.
(2) Webサーバ
Windows NT serverに付属のIISVersion4.0を使用.Windows2000の場合はIIS Version 5.0を使用.
(3) データベースへのアクセス
Microsoft社のAPI機能であるODBC(Open DataBase Connectivity)を経由してデータベースにアクセスする.IISをインストールするとODBC Ver2.5に対応したドライバーがインストールされる.
(4) データベースアプリケーション
Access97をもちいる.Access2000においても動作確認済み.
3.作成手順
1) Accessでデータベーステーブルを作成する.
2) IISのIDC機能を用いてアクセスするためにこのデータをODBCシステムデータソースに登録する.(第2図)
3) データベースに対して書き込みを行うためのHTML形式ファイルを作成.宏観異常登録者フォーム(第3図)
4) データベースにどのような操作を行うのかを定義するIDC形式ファイルを作成.メモ帳などのTEXTエディタで編集可能.
最後にその結果を返すためのHTXファイル(HTML形式の雛形となるファイル)を作成すればできあがる.
4.おわりに
今回の開発においてIISの中のIDC機能を使い,データベースとしてAccessを使用したのだが,本格的にインターネット上で使うにはSQL serverを使用すべきである.これは,Accessをデータベースで使うと,同時アクセス数が限られて来るという問題が存在するからである.ただし基本となるSQL構文には変わりがないので,ほとんどの場合はそのままでも動作可能である.(大澤,1997)そのため今回のシステム開発においても,はじめはAccessで動作の確認をしてから,その後,開発性や信頼性に欠けるようならば,SQLサーバに移行するつもりである.
この開発によってこれまでFaxやE-mailによって情報収集を行い,その都度,情報を更新していた管理者側にとっても,多大な労力の削減になるのと同時に,地震予知の分野にとっても有用なシステムとなるであろう.