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SPM中の放射性核種の存在様式はエアロゾルクラスターか

The aerosol clusters with the radioactive nuclei in the suspended particulate matter (SPM)


岡山理科大学 ○福森洋平、井田佳伸、平井麻理子、葉山義仁、蜷川清隆、弘原海清

(Abstract)A rare gas thorn (220Rn) in atmosphere becomes a metal atom. This radical metal daughter nucleus reacts with a small amount of air and the vapor at once, and adheres to a small cluster. In this experiment, a vacuum cleaner is transformed to a suction machine. Its absorption ability is 1.2 m3/min. A filter of 312μm is attached at edge of vacuum cleaner. We always collected dust with the filter. For check the filter, we set up two filter combinations of 10μm and 0.3μm, and of 0.1μm and 0.3μm. Almost all of the radioactive aerosol are adhered to the filter of 10μm. Therefore we make clear that the radioactive aerosol cluster is so big more than 10μm.

1.はじめに

 自然大気中に放出された希ガスのラドン(222Rn)やトロン(220Rn)は壊変して金属原子になる。このラディカルな金属娘核種は即座に微量気体や水蒸気と反応して直径0.5〜5nmのクラスター(フリー娘核種)になり、このフリー娘核種が大気中のエアロゾルに付着して放射性エアロゾルにある割合で成長すると言われている(児島、1995)。今回の実験では適用した集塵方法で、浮游粒子状物質SPM中の放射性エアロゾルが使用フィルター(0.312μm)でどのように収集されるかを検討する。今回の吸引機は業務用掃除機(吸引量:1.2m3/min)を使い、その先に真鍮製ホルダーまたはプラスチック雨斗で自作したホルダーにフィルターを取り付けた。粉塵フィルターは直径60mmで標準用を0.312μm、細粒用を0.1μm、粗粒用は10.0μmを用意した。この篩分け方法は、取り付けた前後(粗>細)2種類のフィルターで分別したSPMの収集割合を、Ge-LEPS半導体検出器で定量的に確かめ検討する。

2.計測実験の詳細

(1)標準試料の計測: 実験では、SPM採集は岡山理科大学21号館(7階)の屋上、地上64.4m(GPS計測)で行う。採集は毎日13時00分に開始、12時間ごとに過負荷防止のため掃除機を交換しながら24時間連続で採取、これを40日間継続した。サンプリングの終了後は試料をポリエチレン製の小袋(100×70mm)に移し次の連続計測に備えた。GM計測はベータ線測定なのでこの小袋の外側から計測した。
 Ge-LEPSは低エネルギー用の半導体検出器で、著者の1人が熱ルミネッセンス年代測定用として、土中のU, Th系列の含有量を測定するために準備した ガンマ線検出器 である。この検出器はフランスIntertechnique社製のゲルマニウム検出器で低バックグランド仕様として作られている。この検出器は厚さ10cmの鉛レンガで囲われ、更に厚さ2.5 cmの古い鉛(戦国時代のお城の鉛瓦)、厚さ1 cmの無酸素銅で内装し、100〜800keVのエネルギー領域でノイズのないよう低バックグランド化されている。
 標準フィルター(直径60mm、0.312μm)は集塵前に乾燥機で105℃、30分で乾燥させ、0.001mg精度の自動天秤で計量し、ナンバーリングして使用した。SPM採集の直後にGM放射線計測と、引き続くGe-LEPS測定を80000秒(22.2時間)連続して行う。計測終了後に再度GM放射線計測を行って後、再たび乾燥して重量の計量を行う。全ての計測データはMOファイルで保存し、次の作図処理等で活用する。
(2)粒度別SPMの検査用に2組のフィルターを用意した。一組は標準の0.312μmフィルターの前に粗粒10.0μmフィルターを置き(10 > 0.3)、他の組は標準の0.312μmの後に最密な0.1μmフィルターを置き吸引作業を行った。この2組の4枚のフィルターにGe-LEPS測定を行い、娘核種の放射能強度を求め、各フィルターでの放射性SPMの通過量を評価した。

3.結果の検討

(1)通過粒子の実験(10>0.3)結果を下図(左側)に示す。予想に反し、殆ど全ての娘核種の放射能強度は粗粒10.0μmフィルターに付着されており、0.3μmフィルターではごく弱い放射能(80カウント)が2点で観察される。この実験の測定条件は、12時間集塵(通常の1/2)で全体の吸引大気量は263(m3)である。計測時間はGe-LEPSで12時間で通常の1/2である。
(2)通過粒子の実験(0.3>0.1)の結果を下図(右側)に示す。この実験でも、娘核種の放射能強度は最密0.1μmフィルター上に有意に(28カウント)認められる。この実験の測定条件は、12時間集塵(通常の1/2)であるが、最密0.1μmフィルターの影響を受けて全体の吸引量は83(m3)に減少している。計測時間はGe-LEPSで12時間計測で(通常の1/2)である。それぞれの平常実験条件の12分の1に設定している。


4.まとめ

 標準フィルターと粗粒フィルター(10>0.3)組合せ実験では、大部分の放射性エアロゾルは粗粒10.0μmフィルターに吸着される。また細粒フィルター(0.3>0.1)組み合わせ実験では、僅かではあるが標準フィルター(0.312μm)を通過することを確認した。以上の事実からエアロゾルクラスターはかなり大きな付着娘核種であることが証明できた。

日本エアロゾル学会