地震危険予知プロジェクト |
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Precursory quake-Information System by Citizen's Observation on Web | |||||||||||
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ASPによる宏観異常情報システム(MASPA)の開発
原口 竜一*・和佐 好智**・西橋 政秀***・弘原海 清***
Development of Macroscopic Anomaly System by e-PISCO ASP
Ryuichi Haraguchi*, Yoshitomo Wasa**, Masahide Nishihashi*** and Kiyoshi Wadatsumi***
*岡山理科大学大学院理学研究科総合理学専攻 (現:大阪市立大学大学院理学研究科生物地球系専攻) Applied Science, Graduate School of Science, Okayama University of Science, 1-1 Ridai-cho Okayama 700-0005, Japan. E-mail: haryu@sci.osaka-cu.ac.jp
**岡山理科大学大学院総合情報学部生物地球システム専攻 Biosphere-Geosphere System Science, Graduate School of Informatics, Okayama University of Science, 1-1 Ridai-cho, Okayama 700-0005, Japan. E-mail: 0303@pisco.ous.ac.jp
***岡山理科大学総合情報学部生物地球システム学科 Department of Biosphere-Geosphere System Science, Faculty of Informatics, Okayama University of Science, 1-1 Ridai-cho, Okayama 700-0005, Japan. E-mail: wadatumi@big.ous.ac.jp
キーワード:ASP,MASPA,ODBC,ADO,Access2000 Key words : ASP, MASPA, ODBC, ADO, Access2000
1.はじめに
地震予知の手段の一つとして,地震前兆現象 (宏観異常情報)を利用したものがある.中国などでは早くから盛んに行われ,多くの実績を残している.これまでに岡山理科大学の本研究室でも1995年の阪神淡路大震災や,1999年の台湾中部地震などで数多くの宏観異常情報を集めてきた.しかし情報の収集には多大な労力と時間が必要であり,地震危険予知をリアルタイムに行い予報を発するには,多くの問題を抱えていた.そこで情報収集の時間的な問題を解決する手段として,インターネットを利用したシステム開発を行った. 今回開発した宏観異常情報収集システム(MASPA)は2000年9月15日からサービスを開始している.MASPAは宏観異常がMacroscopic anomaly(力武,1986)ということで定義されてあるのでMacroscopic Anomaly System by e-PISCO ASPと名付けた.なおこの機能はASP(Active Server Pages)を利用して作成したものである.ここでは主にASPの紹介を行う.
2.ASP
ASPはIIS(Internet Information Server/Services)やPWS(Personal Web Server)上で動作する「サーバサイトの処理環境」を示す(山田,2000). ASPの主な特徴として,まず処理結果のみを返す(余計なデータを返さない)ことが挙げられる.これは従来のDynamic HTMLに代表されるクライアントサイドスクリプトはブラウザ上で軽快な動作を実現できる代わりに,すべてのプログラムロジックをクライアント側にダウンロードしなければならないという問題があった.しかしASPではサーバー側でデータ処理を行いクライアント側には必要最低限のデータしか返さない.すなわちこれはクライアント環境に依存しないわけである.MASPAはWindows3.1(CPU;i386,Mem;10MB,ブラウザ;IE+NN3.0x以上)の低スペックPCでも動作確認済みである.その他の特徴としてASPではスクリプト言語に非依存である.これは代表的なスクリプト言語であるVBScript以外にクライアントサイドでもおなじみである,JavaScriptやCGIで一般的なPerlなど,自分の得意とする言語で開発が可能である.
3.ASPとデータベースとのつながり
上述で説明したASPだけでは現在の多種多様化されたデータベース(Oracle, SQL Server, Access)に対してあらゆるアクセス手段を提供するのは困難である.そこで,一元的なデータベースアクセスの手段として提供されたものがODBC(Open DataBase Connectivity)である.このインターフェイスはWindowsME,3.xを除く全てのWindows系のOSに標準で装備されている.昨年までこのODBCファイルを直接利用できるシステムで宏観異常情報収集システムを開発した.しかしODBCはシステムレベルのインターフェイスであるために高度な技術が要求される.そこでODBCを連携するための強力なインターフェイス,ADO(AcitveX Data Objects)が必要となってくる.ASPにはADOファイルが用意されていて,ADOを使用することにより一元的にデータベースを操作することが可能となった.要するに Web上からデータベースを使用するにはASP+ADO+ODBC(第1図)があれば,クライアントに十分な操作環境を提供できるのである.
4.MASPAのデータベース
MASPAのデータベースは大きく分けて以下の3つの構成から成り立っている.
・ 個人情報テーブル
・ 宏観異常情報テーブル
・ ログファイルテーブル
個人情報テーブルでは宏観異常情報送信ページにアクセスしてもらう際にログオン名とパスワードが必要なため取得してもらう.その他に住所とE-Mailアドレスを登録してもらう.このログオン名とパスワードによって,その他のテーブルをリレーショナルに結び,個人情報引き出し利用できる.この機能を用いることで,宏観異常情報テーブルには宏観異常情報が送信されると同時に氏名や住所も格納される(第2図).
登録,閲覧のログテーブルは各Webページに搭載されており,様々な情報ログ(IPアドレス,OS,ブラウザなど)がAccess2000に記録される.これらのログはASPの環境変数機能を使用することで容易に取得できる.これまでのログファイルはテキストベースで行われていたのだが,このままではWeb上にログ結果をリアルタイムに掲載することが大変困難であった.しかしログをAccess2000に記録してASPを利用することによりリアルタイムに自動解析表示が可能となった.5.MASPAの機能
現在MASPAには,以下に示す機能が備わっている.
(T) 市民メンバーの登録,更新,削除
(U) 宏観異常情報の入力,閲覧
(V) 会員には月一回のメールサービス(登録者全員に送信)
(W) 掲示板(PC,i-mode用)
(X) アクセスログ自動解析等
これらの機能のほとんどをASPで行っている.ただしメールサービスはニュースビット(株)のBitMailを使用している.このメール配信ソフトはAccess上のすべてのレコードに対して一度にメール配信を行うことができる.6.まとめ
このMASPAの開発によりこれまで問題とされていた情報収集における多大な時間と労力が削減されることになった.その他ASPによるエラーチェック機能が高度になったことによって,Access内の情報が定型化されて格納されることになった. 2001年5月15日現在PISCOには一日平均3500人以上が利用している,そのうちMASPAの機能を利用しているのは1000人以上である.これだけの多くの利用人数にも十分耐えるだけのシステムである.しかも2000年9月から現在まで半年以上24時間連続して稼動しているにもかかわらず,システムエラーによるサービス停止がない.これらのことからデータベースで有名なもの(OracleやSQLサーバーなど)を使わなくても,Web-Databaseシステム開発はASPを利用することによりAccess2000でも十分に対応できることを証明したのではないだろうか.
文 献
原口竜一・弘原海清(2000)Windows2000/NTserverとAccessによるWeb-Databaseの開発.情報地質, vol.11,No2,pp.72-73.
力武常次(1986)地震前兆現象予知のためのデータベース, 東京大学出版,pp.77-81.
弘原海清(1995)前兆証言1519!, 東京出版, 265p.
大澤文孝(1997)WindowsNT4.0 Webアプリケーション構築ガイド.ソフトバンク株式会社, 359p.
升屋正人(1998)Active Server Pages 構築術 -Windows Web Server 構築ガイド 活用編-, ソフトバンク パブリッシング株式会社, 229p.
(株)アンク著(1999)VBScriptポケットリファレンス, 技術評論社, 319p.
生形洋一(1999) ASP実践プログラミング入門, 技術評論社, 343p.
山田祥寛(2000)標準ASPテクニカルリファレンス, ソフトバンク, 547p
第1図 ASPとADOとODBCの関係 | 第2図 個人情報が宏観異常情報テーブルに格納される仕組み |
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