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地震危険予知プロジェクト
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地震前兆時の帯電エアロゾル粒度比率変化の可能性

S96S057 久保田 真子

はじめに
1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震において,数多くの前兆異常証言が報告された.その証言の数は1519にも達し,「前兆証言1519!」(弘原海.1995)として出版された.その中のひとつに,神戸電波(株)の大気イオン測定器が普段とは違う異常値を示したという報告がある.(薩谷,1996)帯電エアロゾルは,現在多くの事例と共に地震前兆現象として有力視されている.本研究室ではこのことに注目し,地震と帯電エアロゾルとの関連性について調べるために,1998年4月から現在まで岡山理科大学21号館6階研究室において,大気イオン測定器(KSI-3500;神戸電波(株)製)を使った測定を24時間連続で行っている.この測定データを基に,イオン濃度グラフとイオン粒度比率グラフを作成し,毎日PISCOのホームページに地震予報としてアップしている.昨年度は濃度グラフを用い予報を出していたが,今年度は粒度比率データにも注目し,地震との相関を検証した.粒度比率データと地震の相関が明らかになれば,濃度グラフと併せてより正確な予報ができる.過去約2年間のデータを基に地震と帯電エアロゾル粒度比率の関係について,現時点までの理解をここにまとめる.

サンプリング方法
・地震データは,過去約2年間('98.4〜'99.1・'99.4〜'00.1)のデータを使った.・ 地震に対する粒度比率の取り方はひとつの地震に対して半日・1日・2日・4日前とそれぞれ4つのパターンをとってデータを出した.大気中の主な放射性物質はラドンと宇宙線である.本研究室の測定器は地上から200メートル以下(実際の高さ21.5m)なので宇宙線は無視できる.よって,本研究室の測定器では主にラドンを測定していると考えられる.ラドンの半減期が約3.8日とされているので,4日前のデータもサンプリングした.☆地震を以下の様に分類する.(表1・2参照)

表1 地震マークの色分けについて

上限を300kmとしたのは,現在の予報のシステムが300km以内の地震を対象としている為.・パターンA・Bの定義パターンA:「狭」は小・中イオンが40%以上,「広」は小・中イオンが39%以下. パターンB:「狭」は小・中イオンが30%以上,「広」は小・中イオンが29%以下.(図1参照)過去のデータ分析の結果と分類する時のしやすさ,誰でも簡単にグラフを見て分かるということから,この40・30という%を基準にした.

・マグニチュードMについての分類は以下の様にした.M3.5以下を星形とし,3.6〜4.0までを菱形,4.1以上を逆三角とする.

・群発地震は24時間単位で1つの地震とする.
・雨や雷などのノイズによる粒度比率変化について,今回はパターンA・Bどちらに
おいても「狭」に分類した.


まとめ
地震分類表を完成させて,最初に気づいたことに6.7.8.9月は「広」に分類された地震の数を見る限り,地震の発生件数は他の月に比べて少ないわけではないのに,「狭」で起こった地震の数は非常に少ないということがあった.これは,大イオンの比率が常に高いことを示し,比率には気候による影響があると考えられる.
また,一つの地震に対して半日・1日・2日・4日とそれぞれ比率データを取ったが,4日前のデータも他の半日・1日・2日前と比べてあまり大きな差は見られなかった.本研究室の測定器では,主にラドンを測定していると考えられている.しかし,ラドンの半減期が約3.8日とされているので,4日前のデータをとった場合は,他の半日・1日.2日前と比べて明らかに差が出るべきである.しかし,地震が続けて起こった場合などを考えると一概には言えない.
「狭」・「広」で起こった地震の割合は,年度やマグニチュード,パターンA・Bによる差はあまり見られなかった.また今回,「狭」に分類された地震の中には,ノイズ(雨・雷など)による粒度比率変化への影響も含まれているので,それらを除けば「広」 で起こった地震の割合はさらに増えると考えられる.さらに,震源地までの距離が変わっても地震の割合にはほとんど変化が見られなかった.以上のことから,地震は年度・距離・Mに関係なく「広」の後で起こる確率が高いといえる.
また,年間を通じて比率が一定でないことから,気候による影響も考慮し,予報を出す際には濃度グラフだけでなく,比率グラフも十分に検討する必要がある.

 

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