トップページへ  
地震危険予知プロジェクト
Precursory quake-Information System by Citizen's Observation on Web 
インデックスページ 要注意情報、お知らせ、履歴 PISCOの紹介 大気イオンや宏観異常による地震危険予知 掲示板
用語辞典 リンク集 サイトマップ

 

西南日本の低周波微動地域で生じる地震と大気イオン濃度変化

I98G059 花江 優一郎

はじめに
 これまで本研究室では,1997年度の大気イオン濃度測定結果と気象庁マグニチュードを使った地震危険分類モデルを提案し (弘原海・原口モデル),以後はこのモデルに従って地震危険の予知活動を行ってきた.ところが芸予地震以降,発生した地震の多くがこのモデルに当てはまらなくなった.逆に,低周波微動がフィリピン海プレートの沈み込み帯付近で多く発生している(小原,2001).そこで今回,西南日本の地震活動と低周波微動及び大気イオン濃度変化の関係について検討した.

図1 低周波微動地域
図2 イオン濃度と低周波微動の関係

低周波微動地域
 低周波微動とは,震源から放出される地震波のうち,特に長周期の波が卓越しているもののことをいう.一般にはその多くが火山性で,1度発生し始めると,数日間継続して生じることがわかっている.一方,1998年4月から2001年12月の間に西南日本で発生した低周波微動の多くがフィリピン海プレートの沈み込み帯の先端付近で発生し,また,火山活動との関係も無かった.そこで今回プレートの沈み込み帯にほぼ平行で,非火山性の低周波微動が多く発生している豊後水道から静岡県までを帯状に囲い,その範囲を低周波微動地域とした(図1).

大気イオン濃度変化と低周波微動地域の地震活動
 2000年及び2001年のデータを調べた結果,大気イオン濃度が3000(個/cc)を超えた回数は48回,その後2週間以内で該当する地震が発生したのは29回,うち地震危険分類モデルに当てはまったのは15回であった.一方,低周波微動地域で発生した低周波微動の総数は2001年が100回で,これは2000年の約14倍である.そこでこれらをもとにグラフを作成したところ,低周波微動は大気イオン濃度が急上昇する約3週間前,なおかつ該当する地震の震源周辺で前後1,2週間に発生していた(図2).これは2年間で11回発生しており,全てがモデルに当てはまらない地震であった.

まとめ
 低周波微動を前兆現象とするならば,この地域で発生する地震に関して大気イオン濃度が急上昇する約3週間前,または上昇後1週間程度で低周波微動を発見できれば,地震予知に寄与できるのではないだろうか.

今後の課題
 今回の検討では使用したデータ量が少ないことから,仮定するにとどまっている.そのため今後もこれらのデータを引き続き検討する必要がある.その他,この地域の地質構造や固着域と大気イオン濃度との関係なども調査するべき項目と考える.

 

論文