地震危険予知プロジェクト |
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帯電エアロゾル210Pbのサンプリングと測定
I98G020 狩野 笑子
はじめに
本研究室では,帯電エアロゾルの大気中の濃度異常が地震前兆の指標となると考え,1998年4月より24時間連続で帯電エアロゾルを測定している.大気イオンは主に大気や地殻中の放射性核種からの電離作用,レナード効果,落雷時の放電などにより大気構成分子が電離されて生成すると考えられている.しかし,放射性核種,ラドンガスの崩壊による<sup>210</sup>Pbはそれ自身が帯電エアロゾルであり,これに注目して研究を行った.
図 鉛-210の生成大気中の鉛-210
地震前兆時の帯電エアロゾル発生は主に大気や地殻中に含まれる放射性核種,ラドンによるのものとされている(弘原海他,1999).ラドン(<sup>222</sup>Rn)はウランの崩壊によって生成される娘核種で,地殻変動によって地中から,希ガスとして放出される.<sup>222</sup>Rnは壊変を起こし3つの壊変生成物(<sup>218</sup>Po,<sup>214</sup>Pb, <sup>214</sup>Bi)を経て<sup>210</sup>Pbができる.この<sup>210</sup>Pbは,半減期も22.3年と長く,自然界のみに存在する.これを核として大気中のエアロゾルが付着したクラスター構造をもつ.この帯電エアロゾルは地震前兆の指標となると考えられている.本実験ではフィルターを用いて大気中の帯電エアロゾルを捕集し,Ge-LEPSを用いて<sup>210</sup>Pbの直接確認を行った.
大気の捕集
測定は2001年12月27日〜2002年1月7日までの間,毎日10時30分より22時30分,および22時30分より10時30分毎の,12時間ごとにフィルターでエアロゾルを採取した. 岡山理科大学21号館屋上にて大気をサンプラー(業務用掃除機)に真鍮製のホルダーを取り付け,粉塵採取用フィルター(捕集効率0.312μm)に12時間捕集,サンプリング終了後にポリエチレン製の小袋に移し,測定試料とした.本研究室のイオン測定器は地上59.4mに設置されており,サンプラーは地上64.4mに設置した.
試料の測定
試料の解析はGe-LEPS(Low Energy Photon Spectrometer)で行った.Ge−LEPS分析は岡山理科大の蜷川研究室で行われた.現在,測定したサンプルは以下の2つである.
・ 12/28 22:30〜12/29 10:30 大気イオン濃度最大値 3855個/cc (期間中 最大値)
・ 12/29 22:30〜12/30 10:30大気イオン濃度最大値 982個/cc (期間中 最小値)
まとめ
現段階では測定結果がすべて出ていないため確証できないが,大気中のエアロゾル大気中のエアロゾルサンプルにウラン系列の放射性核種<sup>210</sup>Pbのピークが明瞭に認識できる. 今回の実験では12時間ごとにフィルターを交換したが,今後は更に信頼性の高いデータが得られるよう24時間ごとに交換し,この観測を定常的に行ってゆき,帯電エアロゾルと<sup>210</sup>Pbとの関係を明らかにしてゆくことが課題である.