地震危険予知プロジェクト |
|||||||||||
Precursory quake-Information System by Citizen's Observation on Web | |||||||||||
|
|
大気イオン濃度と気象(降水量・相対湿度・蒸気圧・露点温度)との関係
I98G024 河田 明大
はじめに
これまでの本研究室の卒論・修論の成果から,大気イオン濃度中に気象ノイズが含まれていることが分かっている.ここでいうノイズとは,地震前兆とは関係のない降水量・相対湿度・露点温度・蒸気圧の影響である.プラス大イオン濃度3000個/cc以上を地震性と考え注目しており,気象変動は3000個/cc内で起こるものが主体である.また,レナード効果(下記述)も同様にこれらの気象要素であり,直接地震前兆に結びつかない.しかし,平常時の大イオン濃度の変動を把握することができるならば,地震危険予知の有効性に繋がると考えた.イオンは,空気中の水分子と結合して安定した状態で存在していることから,主に水(雨滴など)が大気イオン濃度に影響を与えていると考え検証した.方法
1999年・2000年の岡山地方気象台での1時間ごとのデータ(降水量・相対湿度・露点温度・蒸気圧)を資料とした.この気象データと本研究室で測定している大気イオン濃度(1時間ごとのプラス・マイナスの大イオン濃度)の関係を調べた.結果・結論
以下の記述において,マイナス大イオンは全て絶対値をとっている.
・降水量と大気イオン濃度の関係
雨量が5mm以上の日,5mm未満の日,雨が降った2時間前・3時間後,降った2時間前・3時間後以外の雨が降らなかった日の大イオン濃度,4つに分けて関係を調べた.その結果(1999年度平均),雨の時の方が晴れの時よりも,空気中の水分子が増加し大気小イオン量が多くなり,吸着により大イオンも増加する.また,レナード効果(イオン生成の1つ)より,特にマイナスイオンの方が影響を受ける.これらの現象は雨量が多い時に顕著である.また,雨の前後では空気中の水蒸気量・蒸発量の増加に伴い,雨量が5mm未満の時よりも大イオン濃度値が高い傾向が見られる.2000年も同様な結果が得られた.
・地震性の大気イオン濃度とレナード効果による大気イオン濃度上昇との違い
地震性のものはプラス大イオンのみが,数時間3000個/cc以上という異常値を示す.また,レナード効果によるものは両イオンとも上がり5mm以上の雨が降ったとしても,平常時(季節により多少の誤差はある)のイオン濃度に500個/cc前後加えたぐらいで,3000個/ccにも満たないものである.
・蒸気圧・露点温度と大気イオン濃度の関係
1999年・2000年のひと月単位で蒸気圧と露点温度の散布図を見ると右上がりになり,相関係数が平均0.9以上ということから相関がある.また,プラスとマイナス大イオン濃度においても右上がりで,相関係数が平均0.8以上ということから相関があった.それぞれ相関があるのは,水蒸気量に関係していること,イオンバランスを保とうとすることからと思われる.これらの気象と大イオン濃度は,散布図・相関係数からはっきりとした関連性は見られなかったが,月によっては関連性が見られるところもあった.よって,月により誤差はあるものの,大イオン濃度が増加する要因の1つとして水蒸気量が考えられる.