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地震予知を研究している神奈川工科大学(神奈川県厚木市)の矢田直之助教授(熱工学)が、9-10月にかけて起こった紀伊半島沖地震と新潟県中越地震や浅間山噴火の発生前、異常に高い大気中のイオン濃度を測定していたことが分かった。イオンは地震直前にできる地殻の割れ目から放出すると推定され、地震前には平常値の何十倍にも濃度が増すとされる。
<本記>
矢田助教授によると、平常時のイオン濃度は大気1cc当たり500-1000個で、5000個を超すと異常とされる。イオンは粒子の大きさで2種に分けられ、地震で大イオン(半径0.025ミクロン以上)、火山の噴火の際で小さな中小イオン(同ミクロン未満)が放出されるという。
紀伊半島沖地震(9月5日、マグニチュード=M=6.9)、東海道沖地震(同、M7.4)では、同月2日に1万5000個を超えた後、同3日に5000個、同4日には6万5000個に達していた。
また、新潟県中越地震(10月23日-26日、M6.8-M6)では、10月10日に7000個、同11日に1万4000個、さらに同12日午後0時8分には7万1000個の最高値を記録した。続けて同21日に1万個近くまで上昇した。
一方、浅間山の1回目の噴火(9月1日)では、直前の8月31日夜に9万個を測定。9月23日の2回目の噴火直前も4万個に達するなど大きな変化を見せた。
矢田助教授は「浅間山の噴火では直前にイオン濃度が急上昇。紀伊半島沖、東海道沖、新潟県中越の各地震の場合は一度大きく上昇した後、2度目の上昇があり、約24時間以内に地震が発生した」としている。
矢田助教授は、鳥取県西部地震(2000年10月)、芸予地震(01年3月)でイオン異常値を測定した先駆者、弘原海清・大阪市立大名誉教授の指導で専用機器類を大学研究室に設置してイオン濃度を測定している。測定地点から約300キロの範囲の地震や噴火が分かるとされており、「今までの成果も考え合わせると、イオン濃度の変化と地震、噴火との因果関係は強い」と話している。 |