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 理事長あいさつ

  就任ごあいさつ

矢田直之理事長 このたびの東日本大震災において犠牲になられた皆様に、深い哀悼の念を表すとともに、被災された皆様方にお見舞いを申し上げます。一日も早く元の生活が送れるようになることを心から祈念するとともに、可能な限りの支援をさせていただきたいと思います。
 さて、本年1月3日に前理事長の弘原海先生急逝の報に接し、NPO法人の理事長職務を代行してまいりましたが、5月28日の理事会・通常総会において、正式に理事長に選出していただきました。私自身は現職からおわかりかと思いますが、専門は機械工学の中の熱工学という分野です。最近は太陽エネルギー、水素エネルギーなどの再生可能エネルギーやLED蛍光灯や炭化水素系冷媒などの省エネ関連の研究をしております。したがって弘原海先生のように地質学に造詣が深いわけでもなく、地震に関してはほとんど素人同然の私ですが、昔から予知については興味があり、弘原海先生のご指導の下にe-PISCOの活動をお手伝いさせていただいてきました。
 本法人の目的である地震予知に関しては、阪神・淡路大震災の前年から「地電位の測定」という手法で研究を開始し、現在では大気イオンの測定のほかに、動物の異常行動を定量的に測定する手法で地震の予知を目指しております。学会や大学において「どうして工学部の人間が地震予知をテーマにしているのか?」という疑問を投げかけられることがあります。従来から地震に関する研究は、理学部の分野とされていたからでしょう。その疑問に対して、私は一つの自分なりの答えを持っています。
 工学部はいわゆる「ものづくり」が基本です。ものづくりとは、社会(世間)が必要とされるものを提供することに他なりません。一般的にものづくりは物質的な「製品」を作ることと思われがちですが、社会の要求は必ずしも物質的なものばかりではないのです。時には、システムであったり、情報であったり、もちろん工業製品であったりします。さて、地震の分野において社会が要求している「製品」とは何でしょう?私はそれが正確な地震予知だと考えています。正確な地震予知、すなわち、「いつ、どこで、どの程度の規模の地震が発生するか」という正確な情報こそ、社会が要求していることではないでしょうか。この要求に応えることは、立派なものづくりの一形態であり、工学部の仕事に他ならない、そう私は考えています。この点について、以前に弘原海先生と意見を交わしたことがありましたが、完全に私の考えに賛同していただき、心強く感じたことをよく覚えております。
 今回の大震災に関しては、結果的に正確な地震予知情報を発信するには至りませんでしたが、測定点の充実、予測システムの充実などにより、今後も可能な限り正確な地震予知の実現に努力を続けていくつもりでおります。

  平成23年6月

NPO法人 大気イオン地震予測研究会e-PISCO
理事長  矢田 直之
(神奈川工科大学 工学部 機械工学科 准教授)


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