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【厚木】天気予報ならぬ地震予報を−。神奈川工科大学工学部機械工学科の矢田直之助教授らは、近く大気中のイオン濃度の変化を電子メールで通知するサービスを始める。イオン濃度の上昇は地震の発生と関連があるといわれ、矢田助教授らは学術的な実証実験を行っている。電子メールで濃度変化を発信することで、「地震を予知する判断材料」(矢田助教授)としての活用を狙っている。
<本記>
地震が発生する際、地殻ににプレート運動による圧力がかかり、ラドンやトロンなど半減期の早い物質が大気中に放出され、通常は1cc当たり5000個以下という大気中のプラスイオン濃度が1万−10万個に上昇する。
矢田助教授らはNPO法人大気イオン地震予測研究会(弘原海清理事長)と協力して04年8月に計測を開始。その結果、半径300キロ−500キロメートルの範囲で、マグニチュード(M)4なら5割、M6以上なら9割以上の確率で、濃度の上昇から数日−2週間後に地震が起こることが分かった。ただ、梅雨時期に濃度がバラつくなど課題があり、今後はこの問題を克服して確度を上げ、「場所と時間、規模をある程度特定できるようにしたい」(同)という。
日本は地震の予知に関して情報公開が進んでおらず、政府が発表する地震予測も30年間で地震が起こる確率を示しただけで、あまり役に立たない。そこで、この研究を個人に提供し、自己判断で地震予知ができるよう、電機メーカーと提携して専用サイトを開設することにした。登録会員に対しイオン濃度が著しく変化した場合、携帯電話やパソコンのメールに無料で配信する。
イオン濃度は同大キャンパスで5分ごとに計測データを出している。このイオン濃度計測値が200時間前からの平均値の5倍を超えた場合、異常としてメール配信する。異常がない場合も200時間ごとに異常なしのメールを送る。
矢田助教授らはこのほか、地下5メートルに電極を埋め、地電位の変化と地震発生との関連性や、ナマズやスナネズミの動きと地震との関連性についても研究を進めている。将来はこうした研究を複合し「気象情報のように地震情報を提供したい」(同)と話している。
問い合わせは矢田研究室の電子メール(abcxyz5932@yahoo.co.jp)へ。
写真 研究室に設置したイオン計測器
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