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自然現象の変化からの地震予知の研究に神奈川工科大学(神奈川県厚木市)工学部の矢田直之准教授(49)が取り組んでいる。東日本大震災の直後、震度6強の地震が起きた長野県北部では、地震の前兆として、大気状態の急激な変化があったという。
<本記>
矢田准教授が理事長を務めるNPO法人「大気イオン地震予測研究会(e-PISCO)」は、全国16カ所に測定場所を設けている。昨年末には長野県松本市の測定機でイオン濃度が急激に上昇し、「長野県で地震が起きる」と予測した。約4カ月後の3月12日、長野県栄村で震度6強の地震が起きた。
矢田准教授によると、地表の亀裂からはラドンが放出され、プラスイオンが発生する。通常、大気1cc当たりのイオンは千〜2千個程度だが、大きな地震の1カ月〜数週間前になると5万〜10万個に激増する。その後、元に戻るが、再び数万個ほどに上昇すると大地震が起きることが多い−という説だ。
2004年、07年の新潟県中越地方の地震の予知にも成功したという。東北地方には測定所がなく、東日本大震災の予測はかなわなかった。研究の精度を高めるため、測定場所を全国100カ所に増やすのが目標だ。
問題は資金不足。国の補助金を期待するが、「根拠に乏しい」と国内の地震学者から指摘されているため、申請が認められないという。
矢田准教授は「さまざまな現象を検証することで、地震被害の軽減につなげていきたい」と話す。「いつ、どこで、どの程度の規模か」までの正確な予知を実現するのが目標だ。(藤浪繁雄)
写真 大気中のイオン濃度を常時測定している研究室=先月13日、神奈川県厚木市の神奈川工科大学で
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