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駿河湾でM6.5 沼津の大気イオン異常値が前兆と判断 |
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8月11日05時07分頃、駿河湾を震源とするM6.5の地震が発生、静岡・御前崎市白羽、御前崎市御前崎、牧之原市静波、牧之原市相良、焼津市宗高、伊豆市市山で震度6弱を記録、静岡県や愛知県などで大きな被害が発生した。亡くなられた方にお悔やみ申し上げるとともに、被災地にお住まいの皆様に心よりお見舞い申し上げる。 |
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静岡・沼津測定点は今回の地震の震央から51km離れたところに位置している。沼津測定点では、8日09時頃から18時頃まで、9日09時頃から16時頃までの2度にわたって、測定可能限界を超える大気イオン濃度異常を記録した。これらの異常値は、今回の駿河湾の地震の前兆と判断している。なお、現在までの大気イオン濃度変化を解析した結果、駿河湾において、さらに大きな地震が発生する兆しはない。 |
首都圏大地震予測は継続 予測期間入りへ |
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私は、5月末以降の南房総、厚木、沼津の各測定点での大気イオン濃度異常をもとに、8月末〜9月末の間に、首都圏南部(房総半島〜丹沢山地・相模湾)でM7〜8程度の地震が発生すると予測している。今回の駿河湾の地震とは震源域が異なるうえ、前兆現象も明確に分離できたことから、今回の地震発生にともなう、首都圏での地震予測に変更はない。予測期間スタートの“8月末”に近づきつつあるので、これまでに呼びかけてきたような対策をお願いしたい。 |
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国民がもっとも気にしているのは地震が発生する時期ではないだろうか。首都圏の大気イオン濃度は下落傾向だが、完全には静穏化しておらず、詳しい時期は予測できる段階ではない。ただ、参考になる情報はいくつかある。まず、前号で示した箱根火山の地震活動だが、13日頃には活動がほぼ収束したようにみえる。収束してからの静穏期が10日ほどつづけば、大きなイベントが起きるのではないかと考えられる。次に、前号で私が直接電話した神奈川県温泉地学研究所や動物園、水族館からは何の連絡もない。 |
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皆さんには、身の回りの人間や動物、自然、電気機器の異常があれば、e-PISCOウェブサイトから報告していただきたい。と同時に、普段から自然に触れている方々、つまり、動物園や水族館に勤められている方々、漁業関係者、サーファーが身の回りにいれば、ぜひe-PISCOのことを紹介し、異常現象の収集にご協力いただけるようお願いしてほしい。 |
奈良県ではM4.0〜4.5予測 |
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ところで、木津川測定点ではやや大きめの大気イオン濃度異常があった。この異常値から、異常値測定から2週間以内に奈良盆地でM4.0〜4.5が発生するものと予想する。ちなみに、奈良盆地は生駒断層帯、中央構造線、京都盆地−奈良盆地断層帯、生駒断層帯に囲まれている。 |
列島各地でM6クラス頻発 メカニズムはさまざま |
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お盆をはさんだ今期間、列島各地でM6クラスの地震が相次いで発生し、地震にたいする国民の関心が高まった。M6を超えた地震は、(a)9日19時55分の東海道南方沖のM6.8(深さ333km、最大震度4:東京練馬区東大泉、東京千代田区大手町、千葉・鴨川市横渚、市原市姉崎、埼玉・宮代町笠原、栃木・下野市田中、高根沢町石末、岩舟町静、鹿沼市晃望台、宇都宮市明保野町、大田原市湯津上、茨城・つくばみらい市加藤、鉾田市当間、筑西市舟生、取手市井野、石岡市石岡、小美玉市上玉里、常陸大宮市野口、茨城町小堤、笠間市中央、日立市役所、水戸市内原町、福島・葛尾村落合関下、浪江町幾世橋、双葉町新山、玉川村小高、白河市表郷、大河原町新南)、(b)11日05時07分の駿河湾のM6.5(深さ23km、最大震度6弱:静岡・御前崎市白羽、御前崎市御前崎、牧之原市静波、牧之原市相良、焼津市宗高、伊豆市市山)、(c)13日07時48分の八丈島東方沖のM6.6(深さ57km、最大震度5弱:伊豆諸島・八丈町三根)、(d)17日09時05分の石垣島近海のM6.7(深さ48km、最大震度3:沖縄・竹富町上原、竹富町船浮、竹富町波照間、竹富町黒島、竹富町大原、与那国町役場、与那国町祖納、石垣市美崎町、石垣市新栄町、石垣市登野城、多良間村仲筋、多良間村塩川)およびその余震(M6.6)である。 |
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(a)の地震は、日本海溝から沈み込む太平洋プレートのなかで発生した深発地震である。浅い地震では震源に近いところほど震度が大きくなるが、深い地震では、地震波が減衰しにくい太平洋プレートのなかを伝わるため、太平洋プレートが日本海溝に達した付近に震源があるかのような震度分布となる。このように、震源から離れたところで大きな揺れを感じる現象を「異常震域」という。ロシアの沿海州や若狭湾、紀伊半島沖などでも、たびたび深発地震が発生し、異常震域がみられる。たとえば、2007年7月16日に京都府沖の日本海で発生したM6.7(深さ374km)では北海道太平洋側の十勝・浦幌町で最大震度4を記録している。
(c)の地震も(a)と同じように沈み込む太平洋プレート内部で発生した地震である。(a)に比べると浅い場所で発生しているが、メカニズムとしては似通っている。
(b)の地震は、ユーラシアプレートの下に沈み込むフィリピン海プレート内部で発生した地震である。この付近では2001年4月3日に静岡県中部の深さ30kmでM5.3が発生し、現在の静岡・駿河区で震度5強を記録している。なお、1935年(昭和10年)にも静岡県中部でM6.4の「静岡地震」が発生し、現在の静岡・駿河区で当時の震度6を記録しているが、これは浅い地殻内の地震である。
(a)の地震は平面的にみれば、懸念される東南海・南海地震の想定震源域に比較的近いところ、(b)の地震も平面的にみれば、東海地震の想定震源域のなかで発生していることから、巨大地震の発生につながるのではないかとの心配を抱くかもしれないが、立体的にみたり、メカニズムを読み取れば、最近発生した中規模地震とプレート境界で発生する東海・東南海・南海地震とは関連性がないことが分かる。 |
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